「好き嫌いがひどくて。栄養バランスが気になるけど、食べてくれる献立を考えるだけで精一杯…」。
保護者の方と話していると、このような困り感にしばしば出会います。
25年の2月から4月にかけて、トモデココグループで毎月配布しているトモデココだよりでは「偏食」についての専門家コラムを連載しました。
ここでは、3回に分けてお届けした内容を【前編】【後編】に分けてご紹介いたします。
【前編】偏食のワケ
子どもの偏食や好き・嫌いに「悩んだ経験あり」は6割以上
こんにちは、顧問の冨樫です。
トモデココ児童発達支援の保護者の皆様に記入をお願いしている「T式乳幼児発達検査」では、就学前のお子さんの45%に偏食が見られます。
また、大塚製薬が行った調査によると、子どもの偏食や食わず嫌いがあると6割以上が回答しており、多くの保護者の方が食事について悩んでおられる姿が浮き上がってきました。
では、子どもたちはいったいどんな食べ物が嫌いなのでしょうか。
そして、どんな食べ物が「大好き!」なのでしょうか。
嫌い&好きな食べ物ベスト10
嫌いな食べ物
ピーマン、なすび、こんにゃく、刺身、トマト、レタス、メロン、きのこ、スイカ、かまぼこ・ちくわ
好きな食べ物
フライドポテト、うどん・ラーメン、唐揚げ、スナック菓子、ジュース、ハンバーグ、カレーライス、ふりかけ&ご飯、スパゲッティ、ケーキ
どちらかと言えば嫌いだけれど、調理方法などを工夫すると食べることができる食材
キャベツ、青菜、もやし、玉ねぎ、かぼちゃ、にんじん、肉、わかめ、ブロッコリー、えび・カニ
嫌いな食べ物「ピーマン、なすび、こんにゃく、刺身、トマト…」が登場しています。
みなさんのお子さんの嫌いなものも、このなかにあったでしょうか。
さて、嫌いなものはいろいろありますが、実はその理由には共通点があるのです。
偏食の原因の一つとなる「味覚」
「味覚」は、苦味、酸味、甘味、塩味、うま味の5つの味から構成されています。
乳幼児にとっての「味覚」は、口の中の食べ物をゴックンしていいかを判断するための超高感度センサーとしての役割があります。
ヒトは毒や腐った食べ物から身体を守るため、「苦味」と「酸味」のある食べ物は飲み込まない仕組みを持って産まれてきます。特に乳幼児は大人に比べて免疫力が弱いため、少量でも異物や毒を入れないように味に敏感になっています。
嫌いな理由
苦い、酸っぱい、臭いがイヤ、大きくて飲み込みにくい、固くて飲みこみにくい、モサモサする、味が薄い、色や形がイヤ、好きな物以外は全部嫌い
子どもたちが嫌いだと感じている理由をよく見ると、それは命を守るために避けている味や食感、食べ物だということが分かります。
本能が求める「甘味」「うま味」
一方、子どもたちの好きなスナック菓子やフライドポテトは、エネルギーになるものや体のミネラルバランスを保つものなので、本能的に求めます。
私たちは、身体の維持と成長に必要な栄養素として、甘味・うま味・塩味は本能的にゴックンし、苦味と酸味は吐き出すように産まれてきている。
そう考えると、人間の持って生まれた力に驚かされますね。
ちなみに、赤ちゃんが口にする母乳は、主に甘味とうま味からできているようです。
そうはいっても子どもたちに、栄養のあるものを食べて欲しいと思うのが親心です。
そこで次回は、先輩保護者たちはどのような方法にトライしてきたのか、そして高学年におすすめの工夫についてお届けします。
子育てに活きる豆知識vol.3~5【後編】 偏食克服への道とは!?
冨樫 敏彦/トモデココ顧問。児童相談所勤務時に作成した「T式乳幼児発達検査」は、現在徳島市教育委員会の標準検査とされ、就学に向けた教育相談を受ける全ての児童に活用されている。みなと高等学園の創設に携わり初代校長を務めた後、徳島文理大学児童学科で教壇に立つ。現在は、徳島県教育委員会 特別支援学級運営充実検討委員会 委員長をはじめ、各委員・講師を委託されている。